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現代アートとは|特徴・歴史や楽しみ方、代表作品、美術館を紹介

現代アートとは|定義や歴史から楽しみ方、代表作、現代アートが鑑賞できる美術館まで紹介

現代アートについて気になっているものの、

「そもそも現代アートってなんだろうか?」
「有名な現代アートはどのようなものがあるのか?」
「現代アートはどこで見れるのか?」

このような疑問を持っている人も多いのではないでしょうか?

当記事では、現代アートをテーマに、歴史や楽しみ方、代表作、現代アートが鑑賞できる国内の美術館などを一挙に紹介していきます。

目次

現代アートとは|特徴や定義

現代アートとは、現代社会が抱えている問題をひも解き、社会や美術史への批判性を投影している作品を指します。政治や社会をテーマとしていることが多く、作品の背景を知っていないと理解するのが難しいといえます。

そのため、現代アートに対して難解なイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。現代アートは、作品のコンセプトを考えることが重要です。

現代アートの歴史

現代のアートの歴史は、1917年にニューヨークの展覧会で発表されたマルシェル・デュシャンの「泉」という作品が始まりであるといわれています。この作品はなんと既製品の男性便器に制作年度と署名を書いただけのもの。デュシャンはこの作品を通して、「芸術とは何か」を問いました。

一昔前までは視覚的な芸術が求められる傾向がありましたが、時代が流れるにつれて観念的な芸術が重要視されるようになりました。

現代アートがわかりにくいと言われる理由

前述したように、現代アートはわかりにくく、理解するのが難しい作品が多いといえます。正直に言ってしまうと、現代アートは「すぐには理解できないもの」です。作品を見て感じるものがあるならアートとして成立しますが、何も感じないのであればそれはただの物体に過ぎません。

現代アートの生みの親・マルセル・デュシャンは、以下のように語っています。

「作品を起点として鑑賞者が思考をめぐらし、そして鑑賞者の中で完成される」

現代アートは、「考える芸術」です。作品を通して鑑賞者の考えを広げることで楽しめる作品となっています。

現代アート作品の主な種類

現代アートでは以下のようなものが表現技法として扱われます。

  • 絵画
  • オブジェ
  • 建造物
  • 映像
  • パフォーマンス

このように現代アートの表現方法は様々です。現代アートはこれまでの既存概念を覆したものが多く、鑑賞側も作品の背景にある概念を理解しなければいけません。アートと鑑賞者が対話することで作品は完成します。

現代アートの主なジャンル7選

現代アートには、様々な表現の仕方があります。ここでは現代アートの主なジャンルを7つピックアップして紹介します。

1. コンセプチュアル・アート

コンセプチュアル・アート

コンセプチュアル・アートは、1960〜1970年代にかけて世界的に広まったアート。

現代アートと総称されることもあり、ほぼ同義といえるでしょう。コンセプチュアル・アートはその名の通り、作品の美しさや巧みな技術よりも、作品に込められたアイデアやコンセプトを重視しています。

そのため、コンセプチュアル・アートの作品には思想やメッセージなどが背景として含まれていることがあります。視覚的にではなく、鑑賞者の意識や知覚に訴えることで、「考える芸術」を体現しています。

コンセプチュアルアートとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介

2. ポップ・アート

ポップ・アート

ポップアートは、1950〜1970年代にアメリカ・イギリスで始まったアート。

商業広告・漫画・量産品などを素材として取り扱っているのが特徴です。日常目に触れるものを芸術の中に取り込むという手法は、今まで風景や人物をテーマに制作した従来の表現に、新しい風を吹き起こしました。

ポップアートとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介

3. サウンド・アート

サウンド・アート

サウンド・アートは、1980年代に始まったアートで、音を用いた技法です。視覚だけでなく聴覚に焦点をあてることで、音による芸術の可能性を見出しました。

1913年にイタリア未来派の画家・作曲家であるルイジ・ルッソロが、複数の音響装置を組み合わせて制作した「騒音音楽」を発表。この「騒音音楽」が、後のサウンド・アートの先駆けとされています。

4. インスタレーション

インスタレーション

インスタレーションは1970年代に広まった、空間全体を作品とする技法です。

インスタレーションは、アーティストが作り出したい空間にあわせて様々な技法が用いられます。状況に応じて音や光、匂いなどを使うため、鑑賞者は五感を使って楽しめるのが特徴です。

インスタレーションとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介

5. リレーショナル・アート

リレーショナル・アート

リレーショナル・アート(Relational Art)は、直訳すると「関係性の芸術」を意味します。作品の内容だけでなく、観客との関係性を重視しているのが特徴です。

フランスの芸術評論家ニコラ・ブリオーが1998年に発表した「関係性の美学」という本からリレーショナル・アートの概念が広がりました。

6. パフォーマンス・アート

パフォーマンス・アート

パフォーマンス・アートは1960〜70年代に広まった、アートで身体を使って表現する技法です。

パフォーマンス・アートは、

  • 時間
  • 場所
  • パフォーマー
  • パフォーマーと観客との関係

という4つの基本要素が主軸となっており、これらの要素がうまく組み合わさることではじめて成立します。

そのため観客は見るだけでなく、参加や助力を求められたりなどパフォーマンスに巻き込まれることもあります。

7. ミニマル・アート

ミニマル・アート

ミニマル・アート(Minimal Art)は、1960〜1970年代にアメリカを中心として始まったアート。直訳すると「最小限のアート」を意味し、シンプルな形と色だけで表現されているのが特徴です。装飾を可能な限りまで削ぎ落とし、究極のシンプルを追求した形であるといえるでしょう。

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現代アートの5つの楽しみ方

ここでは、現代アートの楽しみ方を5つ紹介します。

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1. よく観察して何を感じるか考えてみる

まずは、よく観察して何を感じるかを考えてみましょう。現代アートは作品だけでは成り立ちません。その作品についての考えが介入してはじめて、作品の価値が見いだされます。まずは様々な方法・視点で作品を観察してみましょう。

  • 上下左右で見てみる
  • 近づいたり、離れてたりして見てみる
  • 大きさ、向き、配置などを見てみる

様々な方法・視点で作品を観察したら、

「なぜこのような形をしているのか」
「なぜこの作品は作られたのか」
「この作品は何を伝えたいのだろう」

など作品について深く考えていきます。作品について考えることが現代アートを楽しむ第一歩です。アートを通してアーティストと対話するイメージで思考を巡らせてみてください。

2. アートのコンセプトを理解する

アートには、コンセプトがあります。今までの美術と比べ、色が綺麗、技術が巧みであるといった感性や価値観で判断するのが難しくなりました。アートのコンセプトを理解するためには政治や宗教、社会背景などを理解する必要があります。

また、同じ題材を扱っていたとしてもコンセプトの込め方や表現方法によって、現代アートは様々な姿に形を変えます。人の数だけ考え方や価値観が異なる分、思いも寄らないようなコンセプトを持った現代アートが生まれているのです。そういったコンセプトについて理解することも現代アートの醍醐味の一つです。

3. アーティストについて調べてみる

現代アートを作成したアーティストについて調べるのもよいでしょう。現代アートの作品には、アーティストの人生や価値観が反映される傾向があります。アーティストの性格や生い立ちなど背景を知ることで、作品を見て分からなかったイメージが鮮明になることもあります。

4. 家族や友人に感想を話してみる

現代アートの理解を深めるためにも、作品についてあなたが感じたこと、思ったこと、考えたことを言語化することが大切です。家族や友人に現代アートを見た感想を話してみるのもよいでしょう。口に出してみることで頭の中が整理され、新しい感情や価値観が芽生えるかも知れません。

5. 他人の感想やレビューを見てみる

他人の感想やレビューを見てみるのも1つの方法です。人によって考え方や価値観はそれぞれ。他人の感想やレビューを見ることで、「こんな考えや視点があったのか」と新しい価値観や考え方に触れるきっかけにもなります。

現代アート鑑賞をさらに面白くする3つのポイント

ここでは、現代アート鑑賞をさらに面白くする3つのポイントについて紹介します。

「近代美術」との違いを理解する

近代美術は、1860年代から第一次世界大戦頃までの作品を指し、視覚的に十分に楽しめる美しさがあるのが特徴です。一方の現代アートは、1990年代以降の作品を指し、コンセプトやインパクトなどを重視しています。

時代によって芸術に対する考え方や価値観は変わっていきました。各々の違いや時代の流れに着目することで、現代アートそのものに対する理解が深まります。

社会情勢について調べる

現代アートには、様々な社会情勢に対する意見や批判が反映されます。その作品を取り巻く社会情勢について調べることで、作品への理解が深まります。

社会問題について調べる

現代アートの中には、作品を通して社会問題に訴えかける「メッセージ性」が含まれたものがあります。社会問題について調べることも現代アートを深く知れるきっかけになりえます。

現代アートの代表作・アーティスト

ここでは現代アートの代表作・アーティストを紹介します。

「泉」 – マルセル・デュシャン

「泉」 - マルセル・デュシャン

出典:泉 (デュシャン) – Wikipedia

現代美術の父と称される、マルセル・デュシャンが作成した「泉」。既製品の男性便器に制作年度と「R.Mutt」という署名を書いただけの作品です。デュシャンはこの作品を通して、「芸術とは何か」を問いました。観念的な芸術の先駆けとなる作品といわれています。

「Radiant Baby」 – キース・ヘリング

「Radiant Baby」 - キース・ヘリング

出典:Radiant Baby – Wikipedia

80年代NYストリート・アートの代表であるキース・ヘリングの作品。ヘリングの作品は、ポップで印象に残りやすいものが多いです。ヘリングの太い線、鮮やかな色彩、動きのある造形は生命と結束の強いメッセージ性が感じられます。

「Marilyn」 – アンディ・ウォーホル

「Marilyn」 - アンディ・ウォーホル

出典:《マリリン・モンロー》アンディー・ウォーホル|MUSEY[ミュージー]

ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの代表作の一つである「Marilyn」。「Marilyn」は、1962年8月にアメリカの人気女優マリリン・モンローが死去した直後に作られたもので、ウォーホルの死に対する意識が大きく反映されています。

ウォーホルが描いたマーリンの肖像画は数十点ほど。その中の一つである「ショト・セージ・ブルー・マリリン(Shot Sage Blue Marilyn)」が2022年5月11日、オークションにかけられ、1億9500万ドル(約254億円)で落札されました。

「無題」 – ドナルド・ジャッド

「無題」 - ドナルド・ジャッド

出典:Donald Judd. Untitled. 1991 | MoMA

ドナルド・ジャッドの作品「無題」は、スチールとアクリル板でできた箱状のオブジェクトで、壁に取り付けられています。色や素材、空間や光の関係性を強調することで、物体の本質を追求した作品です。

「無題」は、ミニマル・アートと呼ばれる美術運動の代表作のひとつです。ミニマル・アートとは、抽象表現主義やポップ・アートに対抗して、感情や意味を排除し、単純で幾何学的な形態を重視した芸術です。絵画や彫刻という伝統的なカテゴリーにとらわれない新しい芸術を目指しました。

「Blue Planet Sky」 – ジェームズ・タレル

「Blue Planet Sky」 - ジェームズ・タレル

出典:光の芸術家、ジェームズ・タレルの日本で見れる作品は?8つ【a】|ミライノシテン

ジェームズ・タレルの作品「Blue Planet Sky」は、光と空間をテーマにしたインスタレーションです。金沢21世紀美術館に所蔵されており、正方形に切り取られた天井から、絶えず変化する空の光や色を体感することができます。

タレルは光を知覚する人間の作用に着目し、作品と通して、普段意識しない光の存在を改めて認識させようとしました。この作品は、自然と人工の境界を曖昧にし、見る者の感覚や想像力を刺激します。

現代アートで有名な日本人

ここでは、現代アートで有名な日本人を紹介します。

草間彌生

草間彌生

出典:草間彌生 – YAYOI KUSAMA MUSEUM 草間彌生美術館

草間彌生は「前衛の女王」「水玉の女王」と呼ばれ、日本を代表する世界的アーティストの一人。

幼いころより幻覚、幻聴に悩まされていた彼女は、それから逃れるために水玉模様をモチーフとしたアートを描き始めました。代表作の「黄かぼちゃ」は、実家の採種場でかぼちゃを見た経験や印象が反映されているそうです。

村上隆

村上隆

出典:村上隆 – Wikipedia

村上隆は、アーティスト、キュレーター、コレクター、映画監督、有限会社カイカイキキ創業者といった様々な顔を持つ、世界で評価されている現代アーティストの一人です。

代表作である「マイ・ロンサム・カウボーイ」は、オタク文化の象徴でもあるフィギュアを等身大にした作品。2008年のサザビーズのオークションでは約16億円(1,520万ドル)で落札され、アジア最高額を記録しました。

現代アートが鑑賞できる日本の美術館

ここまでの説明を聞いて、少しでも現代アートに興味を持った方もいるのではないでしょうか。現代アートで鑑賞できる日本の美術館を紹介します。気になった方は、ぜひ気軽に足を運んでみてください。

国立新美術館

東京・六本木にある国立新美術館。「森の中の美術館」をコンセプトとしており、ガラス越しに自然を一望できるような設計となっています。

国立新美術館の最大の特徴は、コレクションを持っていないということ。コレクションを持たない代わりに、訪れるごとに変化する多様な展覧会・イベントを楽しめるのが魅力です。

国立新美術館

東京都現代美術館

1926年に開館した東京府美術館のコレクションを引き継ぎ、1995年に開館した東京都現代美術館。第二次世界大戦後の美術の収集や若手作家の作品の収集など新たな収蔵作品を合わせて、総数約5,500点を超える収蔵品を保有しています。

膨大な保有数を活かして、現代美術の流れを展望できるコレクション展示や絵画、彫刻、ファッション、建築、デザイン等の現代美術に関する幅広い展覧会を開催。館内の延床面積は日本最大級の広さであり、広々とした展示室でゆったりと鑑賞できます。

東京都現代美術館

金沢21世紀美術館

石川県金沢市広坂にある金沢21世紀美術館。愛称はまるびぃ。略称として「21美」も使用されることも。「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトにとなっていて、全面ガラス張りのこの美術館は正面がなく、4つの入り口から自由に出入りできます。

金沢21世紀美術館では、体感型のアートが展示されているのが特徴です。見て、触れて、感じて、子供から大人まで自由気ままにアートを楽しめる空間になっています。

金沢21世紀美術館

現代アートを購入できる場所

現代アートは入手しづらいイメージもありますが、一般向けに販売されているものも多数あります。ここでは、現代アートが購入できる場所を紹介します。

オンラインサイト

インターネットが発展した現代。現代アートもネット通販で気軽に購入することが可能です。現代アートが購入できるプラットフォームは複数あります。予算やジャンルを考慮しながら、好みの現代アートを見つけてみてくださいね。

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ギャラリー

ギャラリーは、現代アート作品が展示、販売されているスペースです。ギャラリーは日本語に訳すと画廊といいます。美術館で開催されている美術展と異なり、基本的に無料で入場することが可能です。

作品の値段は、販売しているギャラリーによって異なります。1億円を超えるものを取り扱っているところもあれば、1万円程で変えるものを取り扱っていることもあります。ちなみに、美術館は作品を所有している作家や所有者から貸し出しによって展示を行っているため、販売はしていません。

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まとめ

今回の記事では、現代アートをテーマに、歴史から楽しみ方、代表作、現代アートが鑑賞できる美術館まで紹介していきました。

現代アートは、色や技術だけで推し量るのが難しい作品です。なかには「何だこれは」と芸術性を疑うものも。とはいえ、そういったなんともいえない感情を楽しむのも現代アートの一つの楽しみ方と言えるでしょう。

現代アートの楽しみ方は幾通りもあり、思考を巡らせるだけでも楽しみ方は無限に広がります。この記事を参考に、現代アートを楽しむきっかけとなれば幸いです

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