コンセプチュアルアートとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介
コンセプチュアルアートは、作品の美しさや巧みさではなく、コンセプトやアイデアを反映させた作品です。はじめてコンセプチュアルアートを見た人は、「これがアートなのか」と驚いた人もいるのではないでしょうか。コンセプトアートを理解するためには、作品の概念や背景を理解する必要があります。
今回の記事では、コンセプチュアルアートの概要、起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介します。
目次
コンセプチュアルアートとは
コンセプチュアルアートとは、1960年から1970年にかけて世界的に行われた前衛的芸術運動です。日本語で「概念芸術」を意味し、作品に込められたアイデアやコンセプトを重視したアートを指し、作品の背景には様々な思想や社会問題が含まれています。
コンセプチュアルアートの表現技法はアーティストによって様々です。何もない空間に木の玉を並べたような作品もあれば、アーティスト自らが作品の一部になるといった作品もあります。コンセプチュアルアートを定義づける明確な線引はなく、自由に表現できるのがコンセプチュアルコンセプチュアル・アートの特徴です。
コンセプチュアルアートの歴史
コンセプチュアルアートの起源は、1917年にマルセル・デュシャンが作成した作品「泉」からであると言われています。絵画や彫刻という形式を取らずとも、思考や構想のみで芸術とみなせるのではないかという取り組みから端を発しました。
コンセプチュアルコンセプチュアル・アートの起源はマルセル・デュシャンですが、「コンセプチュアルアート」という言葉が表れたのが1960年代からです。1961年にヘンリー・リントが初めて「コンセプト・アート」という名称を使用しました。次いで、1967年にソル・ルウィットが自署のエッセイ「コンセプチュアルコンセプチュアル・アートに関する断章」に「コンセプチュアルコンセプチュアル・アート」というキーワードを使用し、コンセプチュアルアートの存在を確固たるものとしました。
今では現代アートの総称ともされ、多くのアーティストがコンセプチュアルアートを手掛けています。
コンセプチュアルアートの楽しみ方
コンセプチュアルアートは作品の視覚的な「美的刺激」ではなく、概念や観念的な「知的刺激」を楽しむことを重きに置いています。そのため、目の前に存在する作品の造形性よりも、それによって生み出される概念が重要になることもあります。
コンセプチュアルアートを楽しむためには、作品の背景にある概念や作者の思いを理解することが大切です。それは、作者の半生、生立ち、社会的情勢を知ることに他なりません。
コンセプチュアルアートは、鑑賞者が作品と向き合うことで成り立ちます。作品を見た鑑賞者が作者の思いや背景に考えを巡らせることで、作品の価値が見い出されるのです。
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コンセプチュアルアートの代表アーティスト・作品
ここでは、コンセプチュアルアートの代表アーティストについて、代表作とともに紹介していきます。
1. マルセル・デュシャン
マルセル・デュシャンは、フランス生まれの芸術家。現代美術の父と称される彼は、当時の主流であった絵画を「網膜的絵画」として批判。「美術とは思考を巡らせることで完成する」という観念的芸術を提唱しました。パブロ・ピカソやアンリ・マティスと共に、20世紀諸島の芸術家に影響を与えた3大アーティストの一人として数えられています。
代表作「泉」
「泉」は、製品の男性便器に制作年度と「R.Mutt」という偽名を書いただけの作品。
誰でも参加できるニューヨークのアンデパンダン展でさえ、この作品を展示することを拒んだほどです。しかし、デュシャンはこの作品を通して、「芸術とは何か、何を持って芸術とするか」を問いました。コンセプチュアルアートや現代アートの出発点となる作品と言われてます。
2. ジョセフ・コスース
ジョセフ・コスースは1945年アメリカ・オハイオ州トレド生まれのコンセプチュアルコンセプチュアル・アートを代表するアーティストです。1969年に「哲学以降の芸術とその後」を発表。芸術とは形に囚われず、思想や概念によって形成されるものだという、コンセプチュアルコンセプチュアル・アートを提唱した第一人者としても知られています。
代表作「1つと3つの椅子」
1つと3つの椅子は、「椅子」「椅子の写真」「辞書での椅子の説明文」の3つで成り立っている作品。この作品は椅子そのものの美しさではなく、3つの椅子によって構成される関係性を鑑賞者に考えさせるきっかけを与えてくれる作品となっています。
3. ヨーゼフ・ボイス
ヨーゼフ・ボイスは、ドイツ生まれの美術家。脂やフェルトを使った彫刻やパフォーマンス、絵画、ハプニングなど表現技法は多岐にわたります。
「全ての人は芸術家である」という言葉とともに、人々の創造性によって社会を変えようした彼は、政治や経済、環境などの様々な社会問題に積極的に関与。アーティストならぬアーティストとして、20世紀以降の様々な芸術や活動に革命的な影響を残しました。
代表作「死んだウサギに絵を説明する方法」
「死んだウサギに絵を説明する方法」は、頭全体を蜂蜜と金箔で覆い、腕に抱いた死んだウサギに絵画の説明を行ったパフォーマンス作品です。
4. ピエロ・マンゾーニ
ピエロ・マンゾーニは、イタリア生まれの芸術家。30歳という若さで亡くなったその類まれなる芸術センスと感性は数多くの作品を残しました。画家のイヴ・クラインやアルベルト・ブッリの影響を受けて、様々な素材を使った「アクローム(無題)」と称した白い絵画作品を制作しました。
代表作「芸術家の糞」
芸術家の糞は、ピエロ・マンゾーニ自身の排泄物を金属の缶詰に入れ、「30グラム、自然保存」とラベルを貼り付け、当時の金30gと同じ価格で売ったもの。
全90缶が製作され、2015年には、アートオークションにて2,370万円もの価格で落札されました。発表から60年以上たった今でも、世間をざわつかせる作品の一つです。
5. マルセル・ブロータース
40歳まで詩人として活躍していたマルセル・ブロータス。10代の頃から学校に通いながら作家としての活動に着手した彼は、20年間詩人として数多くの作品を制作しました。
詩人20年目を迎えた頃、ルネ・マグリットをはじめとするシュルレリスムのアーティストに影響を受け、詩人から芸術家に転向します。彼の作品は詩人の経験を基にした、ユーモアと文才溢れる作品が多いのが特徴です。
代表作「汚い思考」
「汚い思考」は芸術家としての初作品です。この作品は自身の売れ残った詩集50冊を石膏で固めたもの。20年間の詩人人生に決別を告げる作品となっています。
コンセプチュアルアートで有名な日本人アーティスト
日本でも、コンセプチュアルアートが浸透し、多くのアーティストが活躍しています。ここでは、コンセプチュアルアートで有名な日本人アーティストを紹介します。
1. 河原温
河原温は、愛知県生まれのコンセプチュアルアートを代表するアーティストです。60年代のニューヨークを拠点に活躍し、オン・カワラとして世界中から高い評価を得ています。
彼の作品テーマは「存在」や「時間」が多いのが特徴。代表作である「I got up」は、毎朝自分が起床したことをポストカードに記し、知人に送り届けたものです。作品を通して自分の存在を見に見える形として残すことで、時間や存在の価値について問いました。
2. 会田誠
会田誠は新潟県生まれの現代美術家・アーティスト。美少女、戦争、サラリーマン、政治家、テロリストなどをテーマに、絵画だけでなく、写真、立体、パフォーマンス、インスタレーションなど、様々なスタイルを使ってアートを表現しています。
代表作は、「巨大フジ隊員VSキングギドラ」「無題」「ジューサーミキサー」など。彼が制作した作品はタブーやジェンダーに触れるため、しばしば物議を醸すことも。しかし、一貫して変わらない姿勢と積極的な芸術的取り組みは、国内外問わず幅広い世代から支持されています。
3. 宮島達男
宮島達男は、LED(発光ダイオード)を使用したアート作品を特徴とする美術家です。「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づき、30ヵ国250ヶ所以上で作品を発表してきました。LEDのデジタルカウンターには0を表示させない、1から9までの数字が変化するデジタルカウンターを使うことで、「生」と「死」の循環を表現しています。
代表作は「sea of time」「30万年の時計」など。「sea of time」はヴェネツィア・ビエンナーレ・アペルト’88にも展示され、彼の出世作となりました。
まとめ
今回の記事では、コンセプチュアルアートについて紹介しました。コンセプチュアルアートは、一見してみると何がなんだかわからない、不可解なものに感じるかもしれません。コンセプチュアルアートには様々な思いやストーリーがあり、思考を巡らせることで楽しめる芸術となっています。
作品の解釈に正解はありません。作者側が自由に作品を制作するように、鑑賞側も自由に発想することができるのが、コンセプチュアルアートの醍醐味です。コンセプチュアルアートに興味はあるが、見たことがないという方は、当記事を参考にアートを購入したり、美術館に訪れてみてはいかがでしょうか。
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