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ミニマルアートとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介

ミニマルアートとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介

無駄なものを削ぎ落とし、究極のシンプルを追求したミニマルアート。ミニマルアートを初見でみた人は、「何だこれは?」など疑問で溢れかえっているかもしれませんね。ですがこのシンプルさこそがミニマルアートたる所以なのです。今回の記事ではミニマルアートとは何か、起源や代表作品、代表的なアーティストを紹介していきます。

ミニマルアートとは

ミニマルアート(Minimal Art)とは、主に1960年代のアメリカで展開したアートです。日本語で「最小限のアート」を意味し、形や色を最小限まで削ぎ落とし、それらを反復・連続するといった幾何学的パターンが見られます。

ミニマルアートの歴史

ミニマルアートが本格的に始まりだしたのは、1960年代のアメリカから。それまでの主流であった抽象表現主義を批判的に継承しつつ、「抽象」を限界まで突き詰めようとしました。

ミニマリズムは日本の美術界にも影響しています。日本では、1968年頃から「もの派」という動向が見られました。工業的な素材を用いるミニマルアートとは異なり、木や石などの自然素材、紙や鉄材など素材を扱うのが特徴です。

ミニマルアートの楽しみ方

ミニマルアートは、目の前の物体だけでなく、周囲の空間を含めたアート作品です。作品の要素を最小限に抑えることで、物体を取り巻く空間に意識が向くように作られています。ミニマルアートをより深く理解するためには、事前知識が必要となります。ミニマルアートを鑑賞する際は、以下の2つの要素に注目してみてください。

  • 連続・反復
  • サイト・スペシック

ミニマルアートの最も大きな特徴は、円形・キューブ、線形など同じ形の物体が連続して展示されているのが特徴です。極限まで削ぎ落とされたシンプルな物体がどのようにして表現されているのか、作品全体を俯瞰してみて鑑賞してみてください。

サイトスペシフィック(Site-Specific)は日本語で直訳すると、「場の固有性」を意味し、
特定の場所に帰属する作品や置かれる場所の特性を活かした作品を指します。ミニマルアートは、空間との関係性を非常に重視しています。ミニマルアートを鑑賞する際は作品を展開する場所の広さや光の当たり方、天井の高さなどに着目するなど様々な視点で作品を見てみましょう。

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ミニマルアートの代表アーティスト・作品

ここではミニマルアートの代表アーティストを、代表作品とともに紹介していきます。

1. ドナルド・ジャッド

ドナルド・ジャッドはアメリカ・ミシガン出身のミニマルアートを代表する芸術作家。戦後のアメリカ美術に大きく影響を与えたアーティストの一人として知られています。

ドナルド・ジャッドは、1965年に自身の作品を絵画でも彫刻でもない「スペシックオブジェクト」という概念を発表。金属やプレキシグラスなどの工業素材を用いて制作され、幾何学的形態を採用し、芸術家の手作業を全く感じさせないことから、ミニマル・アートの代表的な作例と評価されています。

代表作「無題(スタックシリーズ)」

彼の作品は「無題」であることが多い傾向があります。壁に長方形の形状が等間隔で並んでいる作品が特徴的です。最小限の要素による「ミニマル・アート」を象徴する作品といえます。

2. フランク・ステラ

フランク・ステラは、マサチューセッツ出身の画家。ネオダダおよびポップアートの作家ジャスパー・ジョーンズの作品「旗」の縞模様に影響を受けた彼は、「ブラック・ペインティング」シリーズの制作を開始。その後様々な色彩を施したり、元々平面的であった形態を立体的なものへと変えていくなど、作風を次々と展開させていきました。

代表作「ブラック・ペインティング」

彼の代表作となる「ブラック・ペインティング」シリーズ。ブラックシリーズのほとんどは彼がニューヨークでアーティストとして活動を始めた頃に制作されました。家庭用の刷毛と商業用の黒いエナメル塗料を使ってフリーハンドで描かれているのが特徴です。

3. リチャード・セラ

リチャード・セラはカリフォルニア州出身の彫刻家・映像作家。鉛や錆びた鉄、巨大な金属板を使った立体作品が有名です。日本でも1970年にセラは、第10回東京ビエンナーレとして知られる「人間と物質」展へ招待され、自身初の野外彫刻「To Encircle Base Plate (exagram)」を制作しています。

代表作「傾いた弧」

「傾いた弧」はニューヨークに設置されたパブリックアート。パブリックアートは公共空間に設置された芸術作品のこと。この作品をめぐっては、街の景観を崩すと周囲から撤廃の声が上がりました。

セラは作品の撤廃に関して、「サイト・スペシフィックな作品であるこの作品を他の場所に移設することは作品を破壊することになる」と主張しました。このパブリックアート論争は裁判にまで発展し、結果として作品は1989年に撤去。パブリック・アートの存在意義を考えるきっかけとなった作品です。

4. ロバート・モリス

ロバート・モリスはミズーリ出身の美術作家。美術評論家としての顔もあり、ミニマル・アート、ランド・アート、プロセス・アート、コンセプチュアル・アートなどアメリカ美術運動を推進した人物としても有名です。

代表作「無題(タン・フェルト)」

1968年の「無題(タン・フェルト)」は、9本の細長いフェルトを吊り下げた、または床に撒き散らしたように見える作品。重力による流動性や一過性が表現されています。

5. カール・アンドレ

カール・アンドレはアメリカ・マサチューセッツ州出身のアーティスト。コンスタンティン・ブランクーシの作品「無限塔」にインスピレーションを受けた彼は、彫刻の形態や空間の認識に着目して様々な作品を手掛けていきました。アンドレの立体作品は鉄や木材や工業製品を幾何学的に組み合わせてつくられているのが特徴です。

代表作「ブリックス(Equivalent VIII)」

「ブリックス(Equivalent VIII)」は120個の耐火レンガを2層に積み上げた作品です。「ブリックス」はロンドンのテート・ギャラリーが1972年に買収。現在も企画展やコレクション展などで展示されています。

ミニマルアートで有名な日本人アーティスト

ここではミニマルアートで有名な日本人アーティストを紹介します。

1. 桑山忠明

桑山忠明は、愛知県名古屋市生まれの画家。ニューヨークを拠点に活動し、ミニマルアーティストとして高い評価を受けています。

初期は日本画の顔料や和紙を用いた作品を制作していましたが、人工的な色や形を意識した表現に移行。ミニマルアートの先駆者として、1960〜1970年代のアメリカのミニマルアートを牽引しました。

とはいえ、本人は自身の作品をミニマルアートと位置づけていません。「アートとは人間がつくり出した美しさ。だからこそ、人工的でなければならない」と述べています。

2. 関根伸夫

関根伸夫は埼玉県大宮市生まれの「もの派」を代表するアーティストの一人です。アメリカのミニマルアートの影響を受けた彼は、1968年から1970年にかけて「もの派」をリードする作品を次々に発表。

関根伸夫の代表作品である「位相-大地」は、地面に深さ2.7メートル、直径2.2メートルに掘られた円柱型の穴と、掘り起こした際にでた土を同じ高さ、直径に固めて作った円柱を隣に置いたもの。「もの派」誕生のきっかけとなった作品と言われています。

3. 李禹煥

李禹煥は1956年に韓国から来日し、活動する「もの派」アーティストの一人です。アメリカのミニマルアートの影響を受けた彼は、自然や人工の素材を組み合わせて行う「もの派」を牽引しました。個展および国際展へ多数出品しており。代表作は『点より』『線より』シリーズは国内外で高い評価を受けています。

まとめ

今回の記事では、ミニマルアートについて紹介しました。ミニマルアートの醍醐味は「これまでの概念に縛られない発想の豊かさ」にあります。これまでの技巧的な美しさから視点を変え、要素を最小限にまで抑えることにより、物体の本質や空間に向き合った作品といえます。

ミニマルアートの作品をみて「なんだこれは」と思うかもしれません。ですが思考を止めず、じっくり向き合ってみることをおすすめします。

「どうしてこのような表現になっているのだろう」
「目の前の物体はどのような役割があるのだろう」

と考えながら見ていくことで、最初に見たときにはなかった気づきや発見が見えてくるはずです。

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