パフォーマンスアートとは|有名な代表作品や若手日本人アーティストを紹介
パフォーマンスアートは、アーティスト自身がアートの一部となって表現するアートです。この記事では、パフォーマンスアートの概要や楽しみ方、代表アーティスト・作品について紹介します。パフォーマンスアートに興味のある方は、ぜひご一読ください。
目次
パフォーマンスアートとは
パフォーマンスアートとは現代アートの一種で、アーティスト自身を媒介として表現するアートです。1960〜70年代に広まった芸術運動で、絵画や彫刻などの視覚芸術とは異なり、アーティストが直接パフォーマンスすることで作品を構成していきます。パフォーマンスアートは、パフォーマーを含めた以下4つの要素によって構成されています。
- 時間
- 場所
- パフォーマー(アーティスト)
- 観客
場所も美術館やギャラリー、シアター、路上など様々です。行われる時間帯や実施時間も多様であり、短時間で終わるものもあれば、1時間以上の長編もあります。
観客においても見るだけでなく、アーティストに参加やサポートを頼まれるなどパフォーマンスに巻き込まれることもあります。
パフォーマンスアートの歴史
パフォーマンスアートの歴史の始まりは、1960年代頃。当時は「ハプニング」というアート動向を指していました。
ハプニングは、ギャラリーや市街地において観客や一般人を巻き込む身体パフォーマンスで、代表作家アラン・カプローが始めた表現形式です。平面、立体作品を制作していたカプローが、新しい表現形態を追求して行為に重きを置くようになったことが発端です。
その後「フルクサス」といったパフォーマンスアートの芸術運動に大きな影響を与え、現代においても多くのアーティストが独自の解釈でパフォーマンスアートを取り入れています。
パフォーミングアートとの違い
パフォーマンスアートに似ているアートとして、パフォーミングアートが挙げられます。パフォーミングアートは、演劇や舞踊など肉体を使って表現される芸術です。日本語では「舞台芸術」「公園芸術」と訳します。
パフォーマンスアートとパフォーミングアートでは、ルーツに違いがあります。パフォーミングアーツのルーツは、演劇・ダンスです。一方のパフォーマンスアートは、アートをルーツとしています。
パフォーミングアーツでは、キャラクター(役)を演じることがありますが、パフォーマンスアートではアーティストはキャラクター(役)を演じるのではなく、あくまで本人として作品に登場します。
パフォーマンスアートの楽しみ方
パフォーマンスアートとは、鑑賞というより体験の感覚が強いアートであり、アートに馴染みがない方でも楽しみやすいアートといえます。
またパフォーマンスアートの楽しみ方には正解がありません。人によって解釈は異なり、鑑賞者の数だけ正解があるといえます。パフォーマンスアートを起点に物事を考えるのはもちろん、何も気にせず目の前の体験を楽しむのもいいでしょう。
パフォーマンスアートの代表アーティスト・作品
ここでは、パフォーマンスアートの代表アーティスト・作品を紹介します。
1. ヨーゼフ・ボイス
ヨーゼフ・ボイスは、ドイツ生まれの現代アーティストです。脂肪や蜜蝋、フェルト、銅、鉄など独特な素材を使った制作が特徴です。前衛芸術運動のグループ「フルクサス」に関わり、多くのパフォーマンスアートを行ったほか、彫刻、インスタレーション、ドローイングなどの作品も制作しています。
他にもアート活動を通して、政治経済や環境問題にも介入しており、活動は多岐にわたっています。
代表作「死んだウサギに絵を説明するには」
「死んだウサギに絵を説明するには」はドイツ・デュッセルドルフのシュメラ画廊で行われたパフォーマンスアートです。頭部を蜂蜜と金箔で覆い、腕に抱いた死んだウサギに壁にかけられた絵画を説明するというシュールなパフォーマンスアートとなっています。
2. マリーナ・アブラモヴィッチ
マリーナ・アブラモヴィッチは、ユーゴスラビア出身のパフォーマンスアーティストです。パフォーマンス・アートのグランドマザーと評されている彼女のパフォーマンスは、自身の肉体に暴力を与える過激な面で知られています。作品を通じて肉体と精神の限界に挑戦し、その可能性を探求しようとしました。
代表作「リズム10」
「リズム10」は、1973年にエジンバラで行った最初のパフォーマンスです。20本のナイフと2つのレコーダーを用意し、リズミカルに指の間にナイフを突き刺すロシアンゲームです。
自分の指を傷つける度に、20本のナイフから新しいナイフを取り出し、ゲームを続行しました。20回失敗したらレコーダーを止め、録音したナイフを突き刺す音を聴くという流れです。同じ動作を繰り返すことで、過去と現在の結合、また肉体と精神の限界の追求を試みました。
3. ヴィト・アコンチ
ヴィト・アコンチは、アメリカ・ニューヨーク出身の現代アーティストです。アイオワ大学大学院で文学・詩学を専攻し、60年代前半は詩人として活動していました。60年代後半から創作をアート作品に発展させ、パフォーマンスアートを中心に、映像や写真作品を発表しています。
代表作「Seedbed」
「Seedbed」は、1972年にニューヨークのゾンアーベント・ギャラリーで行われたパフォーマンスアートです。ギャラリーの床下に身を潜めたヴィト・アコンチが、頭上で歩く人々の気配を感じながら自慰を行い、一方の観客は彼が漏らす声をスピーカー越しに聞くという作品です。
4. オノ・ヨーコ
オノ・ヨーコは、出身の美術作家、音楽家、平和活動家です。世界的に爆発的な人気を誇ったバンド、ザ・ビートルズのメンバー、ジョン・レノンのパートナーとしても有名です。
1959年に渡米し、ニューヨークにてアーティストとして活動を行いつつも、多国籍の参加者が集まる前衛芸術運動のグループ「フルクサス」とともに作品を制作を行いました。
代表作「ベッドイン」
「ベッドイン」はオノ・ヨーコがジョン・レノンと共同して行ったパフォーマンスアートです。ホテルの1室に記者を招き、平和について語り合うという内容です。
このパフォーマンスは2回にわたり、1回目はオランダのアムステルダム・ヒルトン・ホテル702号室にて、2回目は、カナダのモントリオールのクイーン・エリザベス・ホテル1738号室と1742号室にて行われました。
5. 草間彌生
草間彌生は、「水玉の女王」と呼ばれる国際的アーティストです。10歳の頃より水玉と網模様をモチーフに絵を描き始め、水彩、パステル、油彩など印象的かつ幻想的な絵画を制作しています。
水玉模様やかぼちゃで国際的に評価されている彼女ですが、「ハプニングの女王」とも呼ばれており、ニューヨークを中心に、数々のハプニングやファッションショーを行っていました。
代表活動「クサマ・ハプニング」
「クサマ・ハプニング」は、草間が27歳で渡米した際に行ったパフォーマンスアートです。
裸の男女に水玉模様を描いて屋外でヌードデモを行いました。
パフォーマンスアートで活躍中の若手日本人アーティスト
次に、パフォーマンスアートで活躍中の日本人アーティストを紹介します。
1. 百瀬文
百瀬文は、東京都出身の現代アーティストです。現在も東京を拠点に活動を続けています。ろう者との対話、戦時性暴力、人工中絶など様々な題材を取り扱っており、映像制作とパフォーマンスを通して、セクシュアリティやジェンダーへの問いを追求しています。
2. ナイル・ケティング
ナイル・ケティングは神奈川県出身のアーティストです。ベルリンを拠点に、映像、パフォーマンス、インスタレーション、サウンドなど様々な要素を取り入れており、既存の枠に収まらない創作活動を続けています。
3. 西條茜
西條茜は、兵庫県出身のアーティストです。京都市立芸術大学で陶磁器を専攻し、在学中にはRCA交換留学を経て、2014年に同大学院を修了。「虚構」という概念を創作の基盤として、陶芸と現代美術の二つの領域を繋ぐような作品を制作しています。
まとめ
パフォーマンスアートは、身体的な表現や演技を通じて観客に感情やメッセージを伝えるアートです。その瞬間でしか体験できないものもあるのが、パフォーマンスアートの魅力です。もし、パフォーマンスアートを目にする機会があったら立ち止まって楽しんでみてはいかがでしょうか。当記事を参考にパフォーマンスアートをさらに知るきっかけとなれば幸いです。