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リレーショナルアートとは|歴史や楽しみ方、代表アーティストを紹介

リレーショナルアートとは|歴史や楽しみ方、代表アーティストを紹介

リレーショナルアートは、1990年代後半から広まった関係性を重要視するアート作品の総称です。この記事では、リレーショナルアートの概要や楽しみ方、代表アーティストについて紹介します。リレーショナルアートに興味のある方は、ぜひご一読ください。

リレーショナルアートとは

リレーショナルアートとは、「関係性の美術」と言われるアート作品の総称です。1990年代後半より広まった概念であり、作品の内容・形式よりも関係性を重要視しています。

これまでのアート鑑賞では既に存在している作品を受動的に見るというスタイルでした。

リレーショナルアートは鑑賞者は受動的な観客ではなく、参加者として能動的に作品に関わります。出来事や共同作業を通じて人間同士のコミュニケーションや社会的行動などに繋げていくアートとなっています。

ちなみに、リレーショナルアートでの「関係」とは、作品と鑑賞者の間に生まれる関係だけでなく、作品の制作過程で生じる周囲との接触関係のほうに重点を置いています。

ただし、リレーショナルアートは参加者や時期が限られていることから、多くの人に関係性を十分に実感してもらえないのが難点です。参加できなかった人はその痕跡を観るだけであり、そういった部分に対して批判の声が挙がることもあります。

リレーショナルアートの概念が広まった背景

リレーショナルアートの概念が広まった背景として、1990年代後半フランスの美術評論家であるニコラ・ブリオーの著作「関係性の美学」によって提唱されたことがきっかけとされています。さらに彼自身が企画を担当した国際展「トラフィック」展で用いたことにより、その考え方が広く浸透するようになりました。

ブリオーは、芸術作品の価値は制作者と観客との関係性に由来し、芸術が単なる美的な表現だけでなく、人々との相互作用を通じて成立するものだと主張しました。

この考え方はリレーショナルアートの基盤となっており、現代においてもそこから発展して、社会性をテーマにした作品や地域密着型のプロジェクトなどにも広く用いられるようになっています。

リレーショナルアートの楽しみ方

リレーショナルアートの魅力は、鑑賞者も作品の制作過程に関われるのが魅力です。展示空間内でアーティストや他の参加者と交流し、個人の感情や考えを自由に表現しましょう。アートを通じて共通の体験を共有することで新たな視点が開かれます。

リレーショナルアートは鑑賞型のアートに比べて、参加者が感じる印象や感動は大きいといえるでしょう。アーティストの制作過程に関わり、鑑賞者自身が主体となっているためです。

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リレーショナルアートの代表アーティスト7人

リレーショナルアートの代表アーティストを7人紹介します。

1. リクリット・ティーラワニット

リクリット・ティーラワニットは、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれのタイ王国の現代アーティストです。ニューヨーク、ベルリン、メキシコシティ、そしてチェンマイを拠点に活動を続けています。

ニューヨークの画廊でオープニングにタイ風焼きそば「パッタイ」や祖母直伝のレシピでタイカレーを振る舞うパフォーマンスを行ったり、新聞、Tシャツなど日常的な素材を作品に取り入れたりするなど、アートを媒介に鑑賞者とのコミュニケーションを促す関係性の美学を確立しました。

2. リアム・ギリック

リアム・ギリックは、1964年イギリス生まれのアーティスト。現在ニューヨークを拠点に彫刻、版画、建築、グラフィックデザイン、映画、音楽などさまざまなメディアで活躍しています。

「生活を芸術化すること」をテーマとし、ミニマル・アート、カラーフィールド・ペインティング、オプ・アートなどを自身の制作の土台としながら、複合的な手法で作品を展開させています。

3. フェリックス・ゴンザレス=トレス

フェリックス・ゴンザレス=トレスは、キューバ生まれのアーティストです。ジェンダーや人種問題に強い関心があり、作品を通じて自分なりの表現を模索していました。彼の作品は、時計、電球、山積みにした紙片やキャンディーなどを使ったインスタレーションや彫刻作品が有名です。

キャンディーを展示室に大量にばらまいた作品「無題(今日のアメリカ)」では、観客は持ち帰ってもいいし、食べても問題ありません。持ち帰ることで鑑賞者の行動・心理を問いかける作品です。

4. フィリップ・パレーノ

フィリップ・パレーノは、フランス生まれのアーティストです。映画、インスタレーション、パフォーマンス、ドローイングなど様々な作品を制作しています。

彼の作品は哲学的な要素を含んだものが多いのが特徴です。時間と期間の拡大、現実と非現実の境界線の曖昧さに焦点を当てた作品群は国際的にも高い評価を受けています。

5. ヴァネッサ・ビークロフト

ヴァネッサ・ビークロフトは、イタリア生まれの現代パフォーマンスアーティストです。アメリカを拠点に活動をしています。

彼の作品は活人画のようなもので、裸や裸に限りなく近い姿のモデルによるパフォーマンスを行います。2005年には、ベルリンのアートギャラリーにて100人ほぼ全裸の女性を3時間展示したことで、センセーショナルな話題として注目を集めました。

性的な対象として見られる立場や、社会的に受け身であることを強いられてきた女性の身体を表現しています。

6. 平川典俊

平川典俊は、福岡県生まれの現代アーティスト、写真家です。1988年より作家活動を開始、1993年に渡米。以降、ニューヨークに拠点を構え、アメリカ、カナダ、ブラジル、オランダ、フランス、ドイツ、ベルギー、トルコ、インド、日本など世界各地において300を超える展覧会にて作品を発表しています。

文化的差異がもたらす認識や社会と自己の関わり方をテーマに、写真、ビデオ、サウンド、テキスト、映像、インスタレーションといったさまざまな媒体をもちいて作品を制作しています。

7. リー・ミンウェイ

リー・ミンウェイは、台湾生まれのアーティストです。現在はニューヨークとパリを拠点に活動を行っています。

参加型アートプロジェクトを手掛けるアーティストとして知られるリー。見知らぬ他人同士がそれぞれ信頼、親密さ、自己認識などの意味を探ることを目的としたインスタレーション、作家と観客が対面で食事、会話、睡眠などをともにするイベントなどを行ないました。

まとめ

リレーショナルアートは、作品の制作過程によって通じる関係性を重んじたアート作品です。鑑賞者もアートの制作に携われるため、鑑賞型アートより印象に残りやすいです。いつもとは違う視点でアートに触れられるのがリレーショナルアートの魅力といえるでしょう。この記事を参考に、リレーショナルアートをより深く知るきっかけになれば幸いです。

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