ポストモダンとは|起源や代表作品、有名日本人アーティストを紹介
ポストモダンとは「近代以後」を意味し、近代以降の価値観や思想運動のこと。現代アートを理解する上で、ポストモダンはなくてはならない要素です。この記事では、ポストモダンの概要、楽しみ方、代表的なアーティストを紹介します。
目次
ポストモダンとは
ポストモダンとは、「近代(モダン)以後」を意味し、近代以降の哲学・芸術・文学・建築などで展開された思想運動のことを指します。近代から脱却することを目標としていることから、脱近代主義とも言われています。
ポストモダン芸術
ポストモダン芸術は、近代芸術に反発して生まれた芸術作品や芸術運動を指します。一般的にはインターメディア、コンセプチュアル・アート、インスタレーション、マルチメディア、ビデオ・アートが代表的な例です。「現代アート」「コンテンポラリーアート」と呼ばれることもあります。
ポストモダン文学
ポストモダン文学は、近代文学に反発して生まれた文学の総称です。近代文学は秩序性、建設性、普遍性、無矛盾性などの特徴を持ちます。
一方、ポストモダン文学は物語の矛盾を肯定的に含んだり、時間軸の無秩序性、記号性、全面的破壊、模倣などを使って表現されています。
ポストモダン建築
ポストモダン建築は、合理性や機能性を特徴としたモダニズム建築に反発して生まれた建築物や建築様式の総称です。
モダニズム建築が合理性を重視したシンプルで直線が強調された建築スタイルであったのに対して、ポストモダン建築ではデザインや装飾性を重視。曲線的なものが多く、個性的なデザインが多いのが特徴です。
ポストモダンアートの楽しみ方
ポストモダンアートの鑑賞方法に正解や間違いはありません。ポストモダンのアーティストがこれまでの手法に縛られず自由に作品を作ったように、鑑賞側である私達も自由に鑑賞することができます。思考を巡らし発想を膨らませながら、あなたにあった楽しみ方を模索してみましょう。
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ポストモダン芸術の代表アーティスト・作品
ここではポストモダン芸術における代表アーティストや作品を紹介します。
1. アンディ・ウォーホル
アンディ・ウォーホルは、アメリカの芸術家。ポップアートを代表するアーティストでありながらも、映画製作やロックバンドのプロデュースなどマルチに活躍し、様々なジャンルの表現に影響を与えました。
彼の作品は当時経済成長のさなかであった、アメリカの大量消費社会に反映されており「32のキャンベルスープの缶」や「コカ・コーラ3」が有名です。
代表作「ショート・セージ・ブルー・マリリン(Shot Sage Blue Marilyn)」
彼は、当時の大衆文化や大量消費社会だけでなく、「死」についても取り扱いました。代表作の一つである「Marilyn」は1962年8月にアメリカの人気女優マリリン・モンローが死去した直後に作られた作品。ウォーホルの死に対する意識が大きく反映されています。
「ショート・セージ・ブルー・マリリン(Shot Sage Blue Marilyn)」が2022年5月11日米ニューヨークの競売大手クリスティーズにてオークションにかけられ、20世紀の絵画作品としては史上最高額となる約250億円で落札されました。
2. ジェフ・クーンズ
ジェフ・クーンズはアメリカ生まれの現代アートを代表する美術家。キッチュ性(安っぽい、派手)を表現した作品が特徴です。その作品性から時に物議を醸すこともあり、クーンズ自身、訴訟、炎上など話題が絶えない人物でもありました。
代表作「セレブレーション|バルーン・ドッグ(オレンジ)」
彼の代表作品である「セレブレーション」シリーズの1つ「バルーン・ドッグ(オレンジ)」。一見すると風船のように見えるステンレスで制作された作品。
アメリカの大衆性やキッチュ性がよく表現されてるこの作品は、クリスティーズがニューヨークで開催した「戦後美術と現代美術セール」で、5,840万ドル(約60億円)で落札されました。
3. デイヴィッド・ホックニー
デイヴィッド・ホックニーは、イギリス生まれのアーティスト。この一気通貫した姿勢や一貫して具象画に取り組み、スイミングプールをテーマとした作品で知られています。
代表作「女王の窓」
ホックニーは高齢でありながらも、iPadを絵画制作に取り入れるなど常に積極的に新しいメディアを取り入れています。「女性の窓」はiPadでデザインしたステンドグラス作品。女王の窓」はウェストミンスター寺院に設置され、ステンドグラスには、イギリスの田舎を象徴する植物、サンザシの花が描かれています。
4. ロイ・リキテンスタイン
ロイ・リキテンスタインはアメリカ生まれの画家です。アンディ・ウォーホルらと並びポップアートを代表するアーティストであり、漫画の一コマや商業広告を拡大したような絵画作品が特徴です。はっきりとした輪郭線や色、印刷インクのドットが分かるまで、そのまま大きく拡大した作品のように忠実に再現されています。
代表作「ヘアリボンの少女」
リキスタインはアメリカの漫画やテレビドラマの典型的なヒロイン像の顔をテーマに、一連の作品を制作しました。代表作「ヘアリボンの少女」はその中の1つ。大画面に拡大されたその表情は、漫画やドラマの通俗的なプロットやステレオタイプ化した感情表現を強烈に表しています。現在は、東京都現代美術館が所蔵しています。
5. ハンナ・ウィルケ
ハンナ・ウィルケは、アメリカ生まれのアーティスト。フェミニズムを題材として、女性としてのセクシュアリティやエロティシズムを、一貫して視覚化を試みる表現活動に取り組みました。
代表作「イントラ・ヴィーナス」
ウィルケは乳がんに侵され、52歳の若さで亡くなりました。代表作「イントラ・ヴィーナス」は癌に冒されてゆく自らの身体や顔を撮影した写真集です。不治の病を患ってなお、アートに取り組もうとする姿勢や生きる意思が感じられます。
ポストモダン芸術で有名な日本人アーティスト
ポストモダン芸術で有名な日本人アーティストを紹介します。
1. オノ・ヨーコ
オノ・ヨーコは、東京都生まれの芸術家、音楽家、平和運動活動家。イギリスのシンガーソングライターでビートルズのメンバーだったジョン・レノンと結婚し、共に平和活動、音楽、創作活動を行ったことでも知られています。
2009年に現代美術の世界的祭典「第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ」にて、日本人で初めて生涯業績部門の金獅子賞を受賞しました。
2. 斉藤陽子
斉藤陽子は福井県生まれの美術家。1960年代を代表する芸術運動「フルクサス」で活動しました。フルクサスとは「流体の」「発展途上の」という意味があり、斉藤陽子も若いころから世界各地を回り、フルクサスを体現した作家です。
3. 村上隆
村上隆は、アーティスト、キュレーター、コレクター、映画監督、有限会社カイカイキキ創業者といった様々な顔を持つ、世界で評価されている現代アーティストの一人です。
敗戦後の日本をテーマに、オタクカルチャーやキャラクターと日本の美術史を接続する「スーパーフラット」という概念を提唱。マンガとアニメを起点としたキャラクターの絵画やフィギュア彫刻など様々な作品を発表しています。代表作は「マイ・ロンサム・カウボーイ」「五百羅漢図」。
まとめ
今回の記事ではポストモダンについて解説しました。ポストモダンは、近代以降の思想や運動を総称した言葉や思想運動で、様々な分野で展開されました。アートにおいても近代に反した、従来の考えや手法に縛られない、様々なアートが誕生しました。
ポストモダンアートの表現方法はアーティストによって様々で、ポップアートやミニマルアート、コンセプチュアルアートなど数多くの作品があります。ぜひ美術館に訪れたりして、ポストモダンアートの魅力に触れてみてください。
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