キュピズムとは?歴史や有名アーティスト、代表作品を紹介
現代アートを理解する上で、キュビズムの存在は無視できません。キュビズムは、20世紀初めにパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって行われた芸術運動であり、現代アートに大きな影響を与えました。
この記事では、キュビズムの概要や歴史、楽しみ方・鑑賞ポイントや代表アーティストを紹介します。キュビズムや現代アートに興味がある方はぜひ参考にしてください。
目次
キュビズムとは
キュビズムとは、20世紀初めにパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって行われた美術表現・芸術運動です。キュビズムは日本語で「立方体主義」といい、一つの対象を複数の視点から見た絵を幾何学的に分解し、一つの絵にまとめて表現しているのが特徴です。
遠近法や陰影法などの伝統的な技法を無視して描かれるキュビズムは、これまでの絵画のあり方・描き方を根本的に変えた美術技法でした。
現代アートにおいてもキュビズムの技法や思想は、多くのアーティストに影響を与えており、キュビズムなくして現代アートはないといっても過言ではありません。
キュビズムの歴史
キュビズムという名称は1908年、評論家のルイ・ボーカルがジョルジュ・ブラックが描いた街の風景画を「小さなキューブ(立方体)」と評したことが由来とされています。
ピカソやブラックの画風は、近代画家の父と呼ばれるポール・セザンヌの作品に影響を受けています。19世紀までに描かれていた絵画は、伝統的な絵画の描き方を遵守しており、決められたルールの中で写実的に描いていくことが重要とされていました。
そういったリアルに描く芸術に対して、セザンヌは自然を球、円錐、円筒に分解して再構成して描く技法を用いて、その本質を捉えようとしました。セザンヌは1906年に亡くなりましたが、翌年にパリのサロン・ドートンヌにて回顧展が実施され、出展された作品はピカソやブラックを含め多くのアーティストに影響を与えました。
1909年にはピカソとブラックが意気投合し、キュビズムが誕生。共同でキュビズムの追究を行います。1911年頃に制作された作品は署名がなく、どちらが描いた作品なのか判別するのが難しいほど画風が似ていました。
二人によるキュビズムの取り組みは、1917年の第一次世界大戦によって終幕を迎えます。しかし、その後もキュビズムの動向は広まり、美術だけでなく、彫刻や建築など幅広い分野に影響を及ぼしました。
キュビズムの楽しみ方・鑑賞ポイント
キュビズムの作品は、物体や人物が幾何学的な形状に分解・再構築されており、異なる視点からの断片が組み合わさった画風が特徴となっています。そのため、さまざま視点で面や角度ごとの色彩の使い方や筆触の表現を鑑賞するのがおすすめです。
また、作品の背景を調べておくのも良いでしょう。キュビズム作品には、当時の背景が描写されているものもあります。背景を調べておくことで視野が広がり、さまざま解釈を考えられます。
キュビズムの有名アーティストと代表作品
ここでは、キュビズムの有名アーティストと代表作品を紹介します。
パブロ・ピカソ
パブロ・ピカソは、20世紀を代表するスペイン出身のアーティストであり、キュビズムの創始者の一人です。幼少期から描写力に才能があったピカソ。20歳頃からフランスで活動を開始し、生涯に渡って制作した作品数は15万点に及びます。
その芸術は卓越性と多様性に満ちており、絵画のみならず彫刻や陶芸、版画など多くのアートを手掛けています。
作品:ゲルニカ
1937年にピカソがドイツ空軍による無差別爆撃を受けた際に描かれた作品です。作品内には馬や人物の歪んだ形状、破壊された建物、傷ついた市民など混沌とした状況が鮮明に描かれています。白と黒と灰色のみで描くことで、激しい痛みや苦しみがより濃く表現されています。
ジョルジュ・ブラック
ジョルジュ・ブラックは、フランス出身のアーティストであり、キュビズムの創始者の一人です。ピカソとともに、ポール・セザンヌが提唱した「自然を円柱、球、円錐でとらえる」という方法をさらに追求。対象を分解して幾何学的に再構成する「キュビズム」を創りました。
作品:エススタックの家
エススタックの家は、ポール・セザンヌが過ごしたエスタックの風景を描いた作品です。幾何学的に描くセザンヌの画風に興味を惹かれたブラックは、自身も新たな芸術性を模索し始めました。それが後のキュビズムの基盤となっています。
フアン・グリス
フアン・グリスはスペイン出身のアーティストです。尿毒症によりわずか40歳で亡くなってしまいますが、ピカソやブラックに次ぐ、第三のキュビズム創始者と呼ばれています。フアン・グリスはペンネームで、本名はホセ・ビクトリアーノ・ゴンザレス=ペレスです。
作品:バイオリンとチェッカーボード
フアンの作品は、幾何学的形態を取りながらも、何を描いているのかがわかりやすいのが特徴です。ピカソやブラックのモノクロベースのキュビズム作品と異なり、カラフルな色彩を積極的に取り入れています。
フェルナン・レジェ
フェルナン・レジェは、フランス出身のアーティストです。元々建築家を目指しており、印象派風の絵画を描いていました。しかし、セザンヌの絵に衝撃を受けたレジェはこれまでの画風を変更。セザンヌの「自然を円筒、球、円錐として捉える」の中でも円筒に着目し、円筒をモチーフとした絵画を制作しました。
レジェは円筒(チューブ)が好きで円筒を多く描いていたことから、キュビズムをもじって「チュビズム」と呼ばれていました。
アンドレ・ロート
アンドレ・ロートは、フランス出身のアーティストです。その画風はキュビスム作品にしては写実的であるのが特徴です。厳格なキュビスムの作品というよりは「キュビスム的な作品」といわれています。ポスト印象派のカラフルな色彩を取り入れ、風景や裸婦、生物などを描きました。
まとめ
今回の記事ではキュビズムについて紹介しました。パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって生まれたキュビズムは、これまでの絵画のあり方・描き方を大きくくつがえしました。
現在、国立西洋美術館にてキュビズム展が開催されています。2024年1月28日まで行われているので、興味がある方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか。