サウンドアートとは|歴史や音楽との違い、代表アーティスト・作品を紹介
サウンドアートとは音を要素として表現するアートの総称です、この記事では、サウンドアートの概要や楽しみ方、代表アーティスト・作品について紹介します。サウンドアートに興味のある方は、ぜひご一読ください。
目次
サウンドアートとは
サウンドアートとは、音を主体として表現するアートです。1980年代に広がった芸術運動であり、「音」を制作の要素として組み込み、音そのものの魅力を体感することを目的としています。
サウンドアートといっても枠組みは広く、音響、メディア・アート、パフォーマンス、フィールド録音、環境芸術、映像など表現方法は多岐にわたります。
サウンドアートの歴史
サウンドアートが広まりだしたのは1980年代頃からで、ダン・ランダーが使い始めたといわれています。
それ以前も音を主体としたアートは存在していました。イタリア未来派の画家・作曲家、ルイジ・ルッソロによって複数の音響装置を組み合わせ制作した「騒音音楽」がサウンド・アートの先駆けとされています。
それ以降も、ダダイズム、シュルレアリスム、フルクサスなどのアーティストたちが聴覚的表現をアートの中に取り入れてます。現在も多くの現代アーティストが音をアート中に取り入れており、映像やインスタレーション、パフォーマンスなど様々な形で表現されています。
「サウンドアート」と「音楽」の違い
サウンドアートと音楽の違いとしては、演奏者が存在しているかどうか、展示という手法を取っているかどうかなどが挙げられます。
音楽は作曲・演奏を通じて感情やストーリーを伝えることに重きを置いています。一方、サウンドアートは音そのものが主題です。展示としてのサウンドアートは、音と視覚的要素・造形的要素との関係性をテーマとする作品が多い傾向にあります。
サウンドアートの楽しみ方
サウンドアートの魅力は「音」にあり、一つの空間に多様な音・リズムが溶け込んでいます。普段は無意識下で聞き流している「音」。そんな音に意識的に耳を傾け、音を通じて感じられる世界を楽しんでみてください。
「この作品からどのような音がでるのか」と、音の変化やリズムの移り変わりに耳を傾けることで、鑑賞者の想像力を掻き立ててくれるでしょう。また、作品のコンセプトや制作背景を理解することも楽しみ方の一つです。
サウンドアートの代表アーティスト・作品
サウンドアートの代表アーティスト・作品を紹介します。
1. ジョン・ケージ
ジョン・ケージは、アメリカの音楽家。実験音楽家として、前衛芸術全体に影響を与えた人物として知られています。彼の作品は独特の音楽論や表現が特徴です。「沈黙」「偶然性」など様々な要素を作品や演奏の中に反映させています。
代表作「4分33秒」
代表作「4分33秒」ではジョン・ケージが1952年に作曲した代表曲です。第1楽章33秒、第2楽章2分40秒、第3楽章1分20秒から構成されています。すべて休符のみとなっているため、演奏者は音を奏でることはありません。聴衆や環境から会場内で発生する音すべてを作品の構成要素として表現している作品です。
2. 坂本龍一
坂本龍一は、1952年生まれの作曲家・ミュージシャンです。様々なジャンルとのコラボレーションを積極的に行い、多彩な作品を生み出してきました。
代表作「IS YOUR TIME」
「設置音楽」シリーズ2作目となる「IS YOUR TIME」は、「ダムタイプ」のメンバーである高谷史郎と共同して制作されました。東日本大震災の津波によって修復不可能となったピアノから発想を得たインスタレーション作品です。
テーマは「転生」。被災したピアノを世界各地の地震データを使って演奏することで、機能を失い、ものに還った楽器から音楽を再生しようと試みました。
3. 鈴木昭男
鈴木昭男は、 1942年生まれの日本を代表するサウンドアートの巨匠です。1963年、名古屋駅で「階段に物を投げる」パフォーマンスを行って以来、自然界を相手に「なげかけ」と「たどり」を繰り返す「自修イベント」により、「聴く」ことを探求しました。
代表作「点 音」
「点 音」は鈴木昭男が手掛けるサウンドアートの中でも代表的なシリーズ。「点 音」シリーズは、耳と足を組みあせたマークのプレートをエコーポイントとして街中に配置し、そこに立つことで鑑賞者の聴く意識を促すものです。
街のエコーポイントを配置するこの取り組みは1996年に始まり、以来世界30都市以上で行われてきました。
サウンドアートで活躍中の日本人アーティスト
最後に、サウンドアートで活躍中の日本人アーティストを何人かピックアップして紹介します。
1. evala
evalaは、1976年生まれ京都府出身の音楽家・サウンドアーティストです。「See by Your Ears(耳で視る)」をコンセプトに、音楽からアート、都市計画、映画まで、分野をまたいで音の可能性を広げる試みを世界各地で展開してきました。
立体音響システムを新たな楽器として駆使した作品を次々と展開しています。2018年にSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)で発表した「音響回廊“オデッセイ”」は、波面合成によるソニーの空間音響技術『Sonic Surf VR』を使った作品。真っ暗な空間の中にバーチャルな音の洞窟をつくり出しています。まるで音の空間に包まれた没入空間へと鑑賞者を誘います。
2. 及川潤耶
及川潤耶は、1983年仙台市出身のアーティストです。欧州と日本を中心に活動している彼
は「音の芸術」に特化した複数のプロジェクトを各国の自然環境やアートフェスティバルなどで展開しています。革新的なコラボレーションや新たな試みに挑戦しており、国内外で高い評価を得ています。
2013年にはフランス最大の電子音楽賞「Qwartz Music Awards 実験・研究部門」にて最高賞を受賞しています。
3. スズキユウリ
スズキユウリは、イギリス・ロンドンを拠点に活動しているサウンドアーティストです。2018年11月より、世界最大のデザインスタジオ「Pentagram」のパートナーとして就任。音に関わるインスタレーションを中心にデザインコンサルティングを行うなど世界的に活躍しています。
スズキユウリの作品は、身の回りにある物の音「環境音」に着目したものが多いのが特徴です。2018年に行われた「Furniture Music」というインスタレーション展では、家電や家具などから発せられる家庭内の音がノイズ(雑音)を、周囲の環境と調和し快適性を高められる音にリデザインすることを試みました。
まとめ
サウンドアートは音を主な要素とした、聴覚に焦点を当てた音のアートです。視覚だけない、聴覚の要素を加えたサウンドアートはこれまでのアートとは違った魅力があります。新しい表現も生まれており、今後の動向が楽しみであるアートの一つといえるでしょう。この記事を参考に、サウンドアートをより深く知るきっかけになれば幸いです。